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「……」
再び目を覚ますとまた景色が変わっていた。
「……あ」
体の痛みが消えている。脇腹の変色も跡形も無くなっていた。
あれは夢だったのか?まさか、痛みは確かにあった。
柔らかい布団から体を起こす。いつの間にか服は着替えられていた。
洋服……では無い。和服に近いが何か違う。
どこかの民族衣装みたいな……
「気付いたようだな」
「ぇ……」
その人物は部屋に入ってくるとかつかつと足音を響かせながら僕が寝ているベッドの側にある椅子に腰掛けた。
30過ぎだろうか、茶色の瞳と長い黒髪を後ろでアップにまとめた。威厳を感じさせながらもその中に知的な雰囲気を纏う女性だった。
「気分はどうだね?」
「だ、大丈夫……です」
「それは良かった。お腹が空いてるだろうと思って持ってきた。食べるか?」
「い、頂きます」
彼女はテーブルを引っ張ってきてその上にお盆を置いた。お盆の上には白米にみそ汁と焼き魚。オーソドックスな和食だった。
僕は小さくお辞儀してから箸を手に取った。
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