わたあめ

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梅雨が明けした夜に 私は小さなライトを灯し呟く 横で寝息立てる貴方を無視して 夏になると決まって何処かに行こうの約束をして 毎日頑張ろうねって言い合うの 今年は何処にも行かなくても良いの 私は嫌がられても貴方を抱きしめて離さない おやすみを言ってよ ただそれだけ聞けたら幸せ 大きなプレゼントは目に映るものより 心を埋め尽くすような温もりで良いの 私はそれで大人しくなるから… 最近まで手放せなかった傘を置いて歩き出す お気に入りだった赤い傘は畳まれている 空を見て立ち止まる こうした時間が好きなの 未来も一緒に居られるのを感じると 全てに命が吹き込まれる 弱音ばかりだった私も軽快に足を踏み込み 貴方の待つ家へ鼻歌唄いながら 今日の夕食のメニューを考えるの 人参が苦手だけど食べてもらわなくちゃ また太陽が沈み二人だけの世界になる その部屋のドアはまるで光の世界へ続く扉 こんな日々が愛しい 洗濯物は取り込まれ綺麗に並んで積まれている 貴方は几帳面だけど 人参は嫌いって強情っ張りでもある だけどちゃんと食べてくれる優しい所も全部 貴方の全てを愛してる
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