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「何故かは、私にも解らない」
預言者が言った。「私もプログ
ラムの一部だから。紙に書いて
おいたわ。ここに行けば、キー
メイカーと出会うチャンスがあ
るかも…」
俺に紙を渡すと、預言者はど
こかへ消えてしまった。
「彼女の事は、気にしないでお
こう…」俺が言った。「良く考
えてみよう。整理してみよう。
まず、俺はエージェソトに鉄砲
でコートを貫かれ、穴が出来
た。このコートを、コートAと
して、鉄砲の穴を穴αとしよ
う。これを、トリニチィが周り
をカッターで切り取る事で、消
滅させたんだ。正確には、穴α
は非コートAに属する物となっ
た」
「でも何故か、コートAにはま
だ穴が残っていた」モーフィア
ヌが言った。「これをコート
B、そして穴βとしよう」
俺は頷いた。
「次に、トリニチィは穴βの周
りを切り取る事によって、穴β
を非コートBに属する物にし
た。なのに、コートBには穴γ
が出現した」
「ありえないわ」トリニチィが
言った。「理屈に合わないも
の。レトリックスのバグとしか
考えられない」
「まあまて」俺は言うと、オペ
レーターと携帯で通信した。
「オペレーター、レトリックス
のプログラムの中で、この不合
理に関するプログラムバグを調
べてみてくれ」「了解」オペレーターは答え
た。「幾つかあった。でもこれ
はバグじゃない。レトリックス
での法則は、『前提』の通り
だ」
「となると…」俺が言った。
「まず、コートは、前提①に支
配されている。そして、穴αは
前提②を満たし、トリニチィの
初めの切り取り、これを切り取
りⅠとしよう、は、前提③を満
たし、④に違反しない。結果的
に、⑤も満たすから…なんだ?
全ての前提を満たしているじゃ
ないか。にもかかわらず、この
不合理は一体なんなんだ」
モーフィアヌは俺の前に立っ
た。右手には青のカプセル、左
手には、赤のカプセルが載せら
れていた。
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