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「虹が見えなくなっちゃったなあ」
みなもが立ち止り、右手を日避けにして遠くを見つめる。
「たしかこっちの方だと思ったんだけど……」
「もう消えちまったんだろ。そんなに長い時間あるとも思えないし」
博人はみなもの隣に立ち、彼女と同じ方向を見つめる。
バスや電車の中から確認していたわけではないから、もうとっくの昔に消えていたのかもしれない。
虹が出ていた空には、もうその痕跡すら残っていなかった。
「また降ってきそうだな」
そのかわり、青かった空は灰色の雲に覆われ、今にも泣き出しそうなぐらいに曇っていた。
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