虹のふもとに何がある?

16/32
前へ
/32ページ
次へ
「虹が見えなくなっちゃったなあ」  みなもが立ち止り、右手を日避けにして遠くを見つめる。 「たしかこっちの方だと思ったんだけど……」 「もう消えちまったんだろ。そんなに長い時間あるとも思えないし」  博人はみなもの隣に立ち、彼女と同じ方向を見つめる。  バスや電車の中から確認していたわけではないから、もうとっくの昔に消えていたのかもしれない。  虹が出ていた空には、もうその痕跡すら残っていなかった。 「また降ってきそうだな」  そのかわり、青かった空は灰色の雲に覆われ、今にも泣き出しそうなぐらいに曇っていた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

919人が本棚に入れています
本棚に追加