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「やっちまったなあ……」
中庭のベンチに腰掛け、大江(おおえ)博人(ひろと)はため息をついた。
彼の手に握られているのは前に行われた模試の結果。その点数は、博人の反応から容易に想像することができる。
(今回もあんまり、よくないだろうな)
今日も今日とて模試があった。
せっかくの土曜日を半日も拘束されてわざわざ受けたもの。
その出来は、博人自身がよく分かっていた。
本格的な夏の足音が日を追うごとに大きくなっている六月も半ば。先ほどまで降っていた雨はすっかり上がり、今は嘘のように晴れ渡っていた。
久しぶりの快晴。しかし、その日差しはまるで博人の不甲斐なさを責めるように、ワイシャツをまくった腕を刺す。
お天道様は何でもお見通し。
博人はそんな言葉を思い出していた。
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