虹のふもとに何がある?

20/32
前へ
/32ページ
次へ
 みなもは博人の方を向くことはなかったが、その横顔はどこか微笑んでいるように見えた。  それは自分が深刻な顔をしていては、博人が打ち明けづらくなってしまうという優しさの表れ。  博人と長い付き合いである彼女は、こういう時に自分は何をするべきかということをよく理解していた。 「悩み、か」  博人は小屋の窓から外を見やる。  雨は一段と強く降り始め、少し視界が悪くなっていた。 「なんていうんだろうな。自分の未来がよく分からないんだ」  それは、自分の親にも言ったことのない言葉だったかもしれない。 「将来の夢とか、俺にはないからさ。このまま惰性で大学に行っても仕方がないんじゃないかって。学費だって馬鹿にならないし。  かといって就職はいまいちピンとこない。そんなことを悶々と考えていると、机に向かっても集中できないんだよ」    
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

919人が本棚に入れています
本棚に追加