虹のふもとに何がある?

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「虹の仕組み?」 「そっ。虹の仕組み」  彼女は空を見上げたのだろうか。黒くしなやかな髪が静かに波打った。 「光の加減が~とか空気中の水分が~とか、そういうこと。 小さいころってさ、そんなこと考えもしなかったじゃない? 私はさ、虹っていうのはきっと魔法が作り出しているんだろうなって思ってたもん」  屋根を叩く雨の音が、少しだけ小さくなった。  みなもの声がよく通るようになる。 「それが大きくなるにつれてさあ、科学とか気象学とかを知って、虹はこういう風に発生するんだよって、分かっちゃうんだもん。 そんな複雑なこと、考えなくてもいいのにね」  そう言うとみなもは身を翻し、自分の座っていた場所へと歩き出した。 「だけど、大人になるってそういうことなんだと思う。色々と複雑に考えちゃって、何にでも明確な答えを求めようとする。 虹の仕組みを知ったところで、それで世界が変わるわけでもないのにね」  そして再び博人の隣に座ると、子供のように足をばたつかせ始めた。    
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