虹のふもとに何がある?

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 みなもの言葉を聞いた博人は、ぽかんと口を開けたまま言葉を紡げずにいた。この時の彼の顔が、豆鉄砲を喰らった鳩よりも間抜け面であったことは言うまでもない。 「……は?」  しばらくしてやっと発したのがこの言葉が、彼の間抜けさに拍車をかけた。 「お嫁さんだよ!」  顔を離し、満足そうに頷くみなも。 「先行きの見えない今の日本では、お嫁さんになるにも学が必要だと思うんだ。 どこに嫁いでも恥ずかしくないようなお嫁さんになるために、私は勉強してるんだ~!」  学生鞄を相手にステップを踏み、楽しそうに小躍りをしている。 「お嫁さん、か」  一体みなもが何になるために成績を伸ばしているのか、これではっきりした。  彼女の勉強は学者になるためでも大企業に勤めるためでもない。家庭に入り、良き妻になるためのものだったのだ。  やりたいことの答えは、意外とシンプルなものである。 たしかにその通りだ。 こんなシンプルな答えは、早々あるものではない。
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