虹のふもとに何がある?

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「あ、雨止んだね」  みなもは自分の背後、バス停の入り口から差し込む光を確認すると、博人に向かって手を伸ばした。 「帰ろ! 外はとっても綺麗だよ!」  どこまでも無邪気で、単純で、こうと決めたら一直線で。  しかし、どんなに大変なことでも楽しいと言ってやってのけてしまう。それは博人の持っていないものだった。  彼女が眩しく思えてしまうのは、きっとそのせいだろう。    答えはとてもシンプル。  夢見る少女は無敵。    口で言うのは誰でもできる。  しかし、それを実行している人間に言われてしまっては、ぐうの音も出ない。 (敵わねえなあ)  しかし、博人の顔はどこか晴れ晴れとしていた。  自分にはみなものような夢なんてない。  だけど、それは何もしなくていいということの理由にはならない。  これ以上みなもに迷惑を掛けないために、今ここで立ち上がらなければならない。 「そうだな」  博人はみなもの手を握った。  そして二人は、一緒にバス停を出て行った。
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