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「夢、ねえ……」
みなもの「夢」とやらは確実に原動力となり、今の彼女を突き動かしている。
博人の知るかぎり、みなもはそれほど勉強が得意な女の子ではなかったはずだ。
夢見る少女は無敵。
眩しい笑顔で親指を立てている幼なじみの姿を、博人は見ていることができなかった。
「羨ましいな。目指すものがあるってのは」
足元の石ころを蹴飛ばし、博人は首を振った。
「博人くんには夢とかないの?」
みなもが顔を覗きこんできた。
煌めく瞳が、痛い。
「あったらこんな苦労してねえよ」
博人はみなもの視線から逃れるように顔をそらした。
「そっか、そうだよね」
みなもはそれ以上追及しようとはしなかった。
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