虹のふもとに何がある?

8/32
前へ
/32ページ
次へ
 二人の間に沈黙が流れる。  その沈黙を埋めるかのように、どこかでセミがけたたましく鳴き始めた。  二つの校舎に挟まれた中庭に、一陣の風が流れ込む。  その風に、芝生の緑はそよぎ、博人のネクタイとみなものリボンがはためく。  そうして風は、彼方へと吹き抜けていった。 「あ、虹!」  その彼方を、みなもが指差した。 「見て見て! 虹だよ! 虹!」  みなもの指差す先。そこには七色の鮮やかな虹がアーチを描いていた。 「すごいなあ。久々に見たよ!」  みなもはまるで幼い子供のようにはしゃいでいた。 「さっきまで雨が降っていたからな。虹のひとつも出るだろうよ」  博人は特に感慨深くもならず、東の山の向こうに掛った虹を見つめる。 「別に珍しくもないだろう」 「むー。ロマンがないなあ」  みなもは怒ったように頬を膨らませる。 「ねえねえ、博人くん」  しかし、すぐにいつもの笑顔に戻った。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

919人が本棚に入れています
本棚に追加