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「……大丈夫?」
声と一緒に手がおりてきた。探るように髪から額、こめかみ、耳を辿って頬に触れる。
頬にある城崎の右手を握れば、頭の上に手を置かれた。抱きしめるような形で頭を撫でられる。
なんだか妙に安心するのが悔しい。
「外、見て」
嬉しそうな声に、城崎の胸に押し付けていた顔を上げる。
外は少し明かりが点いてる以外真っ暗で、まるで別の世界の空間みたいだった。
見ている内に揺れがおさまって、段々光が灯り始める。
「絶景でしょう」
得意気に城崎が言う。
その言い方が子供みたいで、思わず少し笑った。
「ガキかよ」
「失礼な」
空と同化した地に光が灯って、街になる。さっきまで田舎みたいだったのに、今はもうすっかり都会だ。
田舎も都会も、雨に抱かれて夜を過ごす。
(いなずまがぱっと空にひらめいた。)
おわり
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