イミテーション

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買い物に付き合う約束というのは別に意外ではなかった。硝はよく買い物に人を誘う。 そして今、俺が考えている事は、その『約束』を破る条件。 「いつから約束してた?」 「昨日。の、寝る前くらい」 「じゃあ、まだ約束してからあんま時間経ってないよな?」 陽は意味不明という顔でこちらを見ながら軽く頷いた。 俺は遠回しに意図を示す。 「人に掃除手伝わせといて、手伝わせた本人が逃げるなんてナシだと思わないか?」 「そ……れは」 もしかして行くなって事だったりします? というような顔でこちらを見る陽ににっこり笑ってみせた。 「……分かったよ、断ればいーんだろ」 意外にも素直に従って携帯を取り出す陽に、少し驚きながらもそれを見守る。 どうやらメールを打っているらしかった。 「ん、」 ぱきん、と携帯を閉じる。 それから陽は俺を見て、困ったように笑った。 「掃除、始めるか」 その言葉にああ、とだけ返して、俺はようやく存在を認めた腕時計を一瞥した。 おわり
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