もしもの話

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「あ、手ぇ止まってるよ」 注意されてしまったがまぁいい。 ちなみにギャップがすごいというのは、一見クールなこいつが話してみれば明るくてよく笑う、楽しいやつだという事。髪は黒く、目も綺麗な黒。生粋の日本人だ。 涼しげな目元に通った鼻。 制服だってちゃんと着ればきっと優等生らしく見えるだろうに、教室だからとネクタイを緩めボタンは上から二つを外し、かなりラフな格好だ。 その上、秋なのにブレザーを脱ぎ袖を捲っているものだから、涼しげでクールなイメージとはかなりかけ離れている。 「はぁぁー……やっと終わったー」 どうやら作業が終わったようだ。 白川が前屈みだった姿勢を正す、というよりは後ろに倒す。 今は気の抜けた顔だが、集中している時の顔は真剣そのものだった。ただのポスターにそれだけ真剣になれるか普通……? それなのに注意はしっかりしやがって。 「あれ、萩原はまだ?」 「すぐ終わる」 「手伝うよ」 にっこり笑ってそう言う白川。そして俺の返事も聞かずに貼る予定の紙にノリを塗る。 こいつはいつも仕事が速い。
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