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「萩原ー?」
「っうわ、何?」
意識を目の前に戻すと予想外に白川の顔が近くにあって、思わずのけ反った。
「傷付くわぁー今の反応」
「うっさい」
俺の言葉に口を閉じる白川。あぁ言霊の所為か。
少し自己嫌悪しながら下駄箱で靴を履きかえていると、控え目に歌が聴こえてきた。どうやら白川が口ずさんでいるらしい。
なるほど、中途半端だ。『うるさい』って言ったから一応は黙ったけど、独り言、もしくは歌ならいいわけね。
冷静に分析してみるが、心の奥では不安と安堵が存在する。
「そういえばさ、」
「……何」
「萩原って普通に面白くて楽しいのに、友達少ないよな」
突然の言葉に頭が真っ白になった。
避けてるんだ、俺が。口が悲しいほど悪い俺の事だ。気を許すとすぐ酷い事を言ってしまう。
だから友達なんて、いらない、違う。友達なんてつくってはいけない。六年前からそうしてきた。だってそうしないと、相手を殺しかねない。
頭に浮かんでは消える言葉の数々。処理しきれない。対応しきれない。
「少ないってか……もしかしていない?」
その言葉に、俺はぎこちなく首を縦に振るしかなかった。
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