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それから数分後。
「なぁ桔梗、知ってたか?」
撫子がまた同じ台詞を言った。
「……何をさ」
「ある国では花冠や花鋏にまで、花言葉をつけるんだ。変わってるよな」
「……へえ」
「でも花鋏の方は中々かっこいいんだ」
撫子は嬉しそうに笑って、また静かに本を読み始めた。
「…………」
「…………」
再び部屋に静けさが戻り、ただページを捲る音だけが部屋に響き渡る。
捲る速さには少し差があるが、それもBGMとしては丁度いい。
心地よい音が部屋に満ちる。
……パタン。
「……桔梗、知ってたか?」
「……」
「この部屋には一万四千七百以上の本があるんだぜ」
「……そうか」
撫子は自慢気に言って、席を立った。そしてまた新たに本を持って同じ席に座る。
退屈を奪うために集められた本は、やがて部屋を埋め尽くす程の数になった。
またページを捲る音が聞こえる。
おわり
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