森の宿

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「別に構いませんよ木津晃一さん」 『そうすか! じゃあ今度から用件なくても毎日かけます』 「できれば用件を作って下さい木津晃一さん」 『フルネーム止めてください、距離感が寂しい』 毎日のように電話がかかってくる所為で、寝ていても二時前にふと目が覚めてしまうのだ。 かかってこない日があると、その日はもう眠れない。いや、寝ようと努力はするのだけど。 そのお陰で最近寝不足だ。 まぁそんな事を言う必要なんてないのだけれど。 『でも用件作るって……あ、今度泊まりに行ってもいいすか?』 「ご予約ですか?」 『はい。次の金曜日に』 受話器を頭と肩で挟み、手帳に書き込む。運良くその日の客は一組だけだった。 (お客様が少ないのに運がいいなんて変ですかね) 「承りました」 『できれば土曜日、夜薙さんの予約もとりたいなー、なんて……』 「承りました」 『マジすかっ!?』 木津の喜びようが少し可笑しくて、くすくすと笑いが洩れてしまう。 『何笑ってんすか?』 と不思議そうに訊かれたので何でも、とだけ返しておいた。
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