――巨象襲撃!――

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4番隊隊舎が少し静かになった。 なぜなら4番隊の隊員である雨宮 勇治三等陸尉と神崎 武人三等陸尉が遠征で東北護城群まで行ってしまったからだ。 もちろんこの遠征で4番隊の戦力は少々低下したが、たかが少々、なんらいつもの4番隊とは変わりない。と4番隊隊長である荒井 拳三等陸佐は考えていたのだが、その考えは間違いだったと後に語ることとなった。 「あー、ひまだー。魂喰いが襲ってこないかなー?」 この恐ろしいことを話す女はレミナント・ファントム二等陸尉、背の高さや端整な顔立ちでよく20歳以上に見られるが実はまだ18歳の未成年である。 「そんな物騒なこと言っちゃ駄目ネ。本当に来たらどうするヨ?」 片言の話し方が目立つこの少年は王 双刃[ワン ソウジン]三等陸尉、背は低いがレミナントと同じ18歳である。 「んなこと言ってもよー、ひまなもんはひまなんだよ。なー、シャミ」 「…………コクッ」 レミナントの呼びかけに無言で首を縦に振って答えたのはシャミセルツ・ファントム二等陸尉、名前から分かるようにレミナントの身内、詳しく言えば双子の妹である。シャミセルツは髪型と性格以外は姉にそっくりで背の高い女性である。 この3人実は少しややこしい関係で王はシャミセルツに対し好意を持ち、シャミセルツは実の姉であるレミナントのことが姉としてではなく一人の女として好きなのである(つまりはレズ)。レミナントはシャミセルツの気持ちを知っているが、妹が変な道に入っていくのではないかという心配が勝っていて恋愛感情はない。 閑話休題。 話を先程のファントム姉妹と王の会話に戻そう。 「ちょっ、シャミも頷いちゃ駄目ネ。……そ、そうだ!今から僕の部屋で――」 ビービービービー 王が自分の部屋に片思いの相手を誘うというかなり勇気のいる行為を邪魔するかのように隊舎中の警報[アラーム]が鳴り響いた。 「お、ホントーに魂喰い来た!行くぞ!シャミ、王!」 「…………コクッ」 「……ち、畜生ネッ!」 とびっきりの勇気を振り絞って出た言葉を邪魔された王はこれ以上にない気合いで戦闘に向かったという。
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