エピソード7

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 落ち着け俺。これは、間違いなく蒼紀が仕組んでいた事だ。俺と美瑠の名前が、なんの根拠もなく上げられたのが物語っている。  クラスのみんなが反応しないという事は、こいつら全員グルだ。恐らく、俺と美瑠、そして槇村先生が不在の時に仕組んだのだろう。 「あ、蒼紀! いくら何でも、それはおかしいって! 俺、クラスの事だって全然分からないし、春祭りってのもまだ理解していないし、実行委員なんて無理だよ! むしろ、蒼紀が引っ張る方が俄然いいって!」  さすがに、この学園に関しては全く無知である俺が、みんなを引っ張るのは無理がある。生徒会長なんだし、さすがに俺が無理だと言って、無理やり役割を押し付けないはず。 「美瑠も嫌かい?」 「……紅の言うとおり、兄さんがやる方が絶対に良い」 「……分かった。仕方ない」  蒼紀はやっと諦めたのか、軽い溜め息を吐きながら、教卓の上に置かれているクラス名簿を手に取り出す。 「それじゃあ、水野君と二階堂さんにやってもらおう」 「ちょっと待てぇぇ! 絶対分かってないだろ! それ、ただ名前から名字に変わっただけで、結果が全然変わってねぇぞ!」  俺は即座に、蒼紀にツッコミを入れると、美瑠がチョンチョンっと、俺の裾を引っ張る。 「な、何だよ?」 「もう諦めるわよ、紅。あぁなった兄さんは、もう止める事は出来ないわ」  ば……バカな!? あの美瑠が、いとも簡単に諦めるだと!? これが、兄貴としての、会長としての威厳だとでも言うのか……? 「さすが美瑠、何だかんだでクラスの事を考えてくれているんだね」 「わ……私は別にそんなんじゃないし、ただ決まったものは仕方ないって言うか……」  顔を赤くし、小さなトーンで喋りながら、体が段々と縮こまる美瑠。  この流れは、覆せない。こうなってしまっては、俺も潔く諦めるしか選択肢がない。ここで踏ん張っても、空気読めない男みたいで、悪い印象をみんなに与えてしまうのはごめんだ。 「……分かったよ。俺も実行委員やるよ」 「やっぱりやってくれると思っていたよ」  蒼紀はにこやかな表情でチョークを手に持ち、黒板に簡単な傘の絵を描き、その下に俺と美瑠の名前を書き込んでいく。  あれー? 何かおかしくね?  蒼紀が書いてるの、絶対におかしいよね?
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