18542人が本棚に入れています
本棚に追加
落ち着け俺。これは、間違いなく蒼紀が仕組んでいた事だ。俺と美瑠の名前が、なんの根拠もなく上げられたのが物語っている。
クラスのみんなが反応しないという事は、こいつら全員グルだ。恐らく、俺と美瑠、そして槇村先生が不在の時に仕組んだのだろう。
「あ、蒼紀! いくら何でも、それはおかしいって! 俺、クラスの事だって全然分からないし、春祭りってのもまだ理解していないし、実行委員なんて無理だよ! むしろ、蒼紀が引っ張る方が俄然いいって!」
さすがに、この学園に関しては全く無知である俺が、みんなを引っ張るのは無理がある。生徒会長なんだし、さすがに俺が無理だと言って、無理やり役割を押し付けないはず。
「美瑠も嫌かい?」
「……紅の言うとおり、兄さんがやる方が絶対に良い」
「……分かった。仕方ない」
蒼紀はやっと諦めたのか、軽い溜め息を吐きながら、教卓の上に置かれているクラス名簿を手に取り出す。
「それじゃあ、水野君と二階堂さんにやってもらおう」
「ちょっと待てぇぇ! 絶対分かってないだろ! それ、ただ名前から名字に変わっただけで、結果が全然変わってねぇぞ!」
俺は即座に、蒼紀にツッコミを入れると、美瑠がチョンチョンっと、俺の裾を引っ張る。
「な、何だよ?」
「もう諦めるわよ、紅。あぁなった兄さんは、もう止める事は出来ないわ」
ば……バカな!? あの美瑠が、いとも簡単に諦めるだと!? これが、兄貴としての、会長としての威厳だとでも言うのか……?
「さすが美瑠、何だかんだでクラスの事を考えてくれているんだね」
「わ……私は別にそんなんじゃないし、ただ決まったものは仕方ないって言うか……」
顔を赤くし、小さなトーンで喋りながら、体が段々と縮こまる美瑠。
この流れは、覆せない。こうなってしまっては、俺も潔く諦めるしか選択肢がない。ここで踏ん張っても、空気読めない男みたいで、悪い印象をみんなに与えてしまうのはごめんだ。
「……分かったよ。俺も実行委員やるよ」
「やっぱりやってくれると思っていたよ」
蒼紀はにこやかな表情でチョークを手に持ち、黒板に簡単な傘の絵を描き、その下に俺と美瑠の名前を書き込んでいく。
あれー? 何かおかしくね?
蒼紀が書いてるの、絶対におかしいよね?
最初のコメントを投稿しよう!