エピソード1

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 今年、高校二年生になる春、親の仕事の事情により、学校を転校する事になった。  面倒くさいのなんの。特に人間関係は、また一から築き上げなければならない。  現在、俺は新幹線で東京都から兵庫県に移動しているところである。窓際に座っており、ボーっと景色を眺めている。  空は快晴で、暖かい日差しが差し込み、凄く気持ちが良い。  無限にスライドする景色には家だけでなく、幾度となく桜の木が通り過ぎ、季節が春である事を実感させられる。  そんな黄昏てる中、俺の携帯が鳴る。当然、マナーモードなのでバイブだけどな。どうやら、親父からのメールみたいだ。 『駅前で待ってるぞ、紅!』  俺の名前は文字通り『くれない』と呼ぶ。何という中二臭い名前なのだろうか。  やがて目的地に着き、新幹線を降り、改札を通って外に出ると、直ぐ近くに親父が車の前で煙草を吸って待っていた。 「煙草消せ。つか、白衣かよ」  俺の親父は医者ゆえに、家でも常に白衣姿。前髪は全てオールバックで、それなりに整った顔立ちである。 「紅ぃー、悪かったな。ほら、早く家に帰るぞ」  親父は煙草をアスファルトに捨て、足でグリグリと踏み付けて処分する。煙草はそのまま放置。こういう奴らが地球を駄目にするんだよな。まぁ、俺も無視だけど。 「家に帰る――ねぇ。俺は初めて行くんだけど」  向こうの家では、既に母さん、弟、妹が一週間程前からいる。なぜ俺だけが遅いのかと言うと、友達と旅行をエンジョイしていたからだ。  車の後部座席に座り、新幹線と同様に窓から景色を眺める俺。車は動き出し、新しい家に向かい始める。それから、約二〇分ぐらい経つ頃――。 「もう直ぐ着くぞー」 「あいよー」  気の抜けたような返事をしながら、俺はまだ外を眺めている。ここが、今日から俺の住む街になるのか……。 「お? あれは何だ?」  親父が右の窓を見ながら目を大きく見開き、驚いた表情をしていた。俺も気になり、ついその方向に顔を向けると、女の子が一人、巨漢の不良に絡まれていた。 「紅ぃー、ちょっと助けてこいよー」  おいおい、冗談キツいぜこの糞親父……。俺は地球育ちの戦闘民族じゃないんだぜ? スカウターなんかなくても、裸眼で不良の戦闘力が見える。  二メートルはある身長に、ゴリラのような体格、大根のような太い腕。宇宙の帝王と戦う程に無謀だろ。
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