18542人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、困っている人を見過ごすのは気分が悪い。むしろ、無謀だとしても助けたくなるのだ。別に正義ぶってるつもりはない。昔からそうなのだ。
助けに行きたい。だが、車が止まらない事には……そう思っていた矢先、車が徐々に停止し始める。
「よっしゃ、信号に捕まっちまったぜ。だから、行ってこい」
よっしゃって何だよ!? とりあえず、俺は黙って頷く。
奴に勝てるのだろうか? バッドエンドしか見えないが、どうせ死ぬなら、女の子の為に戦って戦死してやるか……
車の扉を開け、女の子がいた、『いかにも誰も通らなそうな細い路地』に向かって、俺は全力疾走する。
「――見つけた!」
そこで俺は考える。不良との距離はおよそ五〇メートル弱、俺は今、疾走状態だから六秒程でたどり着く。
だが、まともに戦っても間違いなく俺は死ぬだろう。だったら、『不意打ち』しかないな。さて、攻撃方法を考えたところで次に、どこを攻撃する?
脇? 足? いや違う。『顎』に一撃をぶちかます。人間は顎を少し揺らされるだけで脳震盪を起こし、立ち上がれなくなるからな。
よし、次はタイミングだ。不良は今、俺から見て右を向いている。ギリギリまで寄って、ボクサーの如くアッパーか?
否、二メートル程で跳び蹴りをかます! もし、避けられたら『足が滑りました』でごまかし、彼女を連れて逃げ去る!
「近付くな! この変態不良野郎め!」
「いいじゃないか、付き合ってくれよ! じゃなきゃ無理やりにでも……」
女の子は顔を真っ青にしながら、口を引きつっている。不良は卑猥な表情をしながら、両手が怪しい動きをしていた。
「待てよ! こんぬぁぁっ!?」
突如、地面を踏み込んだ右足が俺の意志と関係無しに真後ろに振り上げられる。
何かを踏んで滑ったのは瞬時に理解した。足にツルンとした感覚があったからだ。
「ぐほぉっ!?」
俺は二人の間に、勢いよく胸元から地面に叩きつけられる。
「おい、何だてめぇ!」
不良が怒り口調で俺に正体を問いかけてくる。こんな展開になるとは思わなかったぜ……
――ここは死んだフリをするか? いや……あの不良は間違いなく俺の頭を虫けらの如く踏み潰すだろう。ならば、これでどうだ!
最初のコメントを投稿しよう!