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「すみません。お魚くわえたドラ猫を追いかけていたら、裸足で駆けてくゲンが何の因果か俺と接触し、吹き飛ばされた俺はここに……」
「それで?」
真顔でそう言い放つ不良。やはり駄目か……どうする? 考えろ、考えるんだ! この逆境を乗り切る方法を……
「早く助けなさいよ、このバカ!」
背後にいる女の子が急に俺のパーカーを掴み、気管が圧迫する程の力で後ろに引っ張る。
「ごほぉっ!? 今考えてる――んだよ……」
彼女の手を振り解きながら後ろを向くと、信じられないぐらいに可愛い女の子がムスッとした表情で立っていた。
目はパッチリ二重、睫毛が長く、細い眉、筋の通った鼻に、水もはじくような柔らかそうな唇。小顔で前髪を左に分けた、綺麗な腰辺りまである長いストレートの黒髪。
俺は、そんな彼女に目を奪われ、硬直した。
「何ジロジロ見てんのよ、変態駄目男!」
――が、それも一瞬で終わりを告げた。さっきの彼女の一言で一瞬で冷めてしまったからである。
「邪魔したな……」
「ふざけんじゃないわよ! 女の子が困ってるのに、助けないなんて最低! 男としてクズね! 死ねばぁ!?」
さすがに温厚な俺も、初対面の女の子に酷い罵声を浴びせられ、遂に堪忍袋の緒が切れた。
「っざけんな! ちょっと可愛い娘だなと思って下手に出てりゃあ言いたい放題言いやがって!」
そう怒号を放つと、彼女はいきなり赤面して顔を俯ける。
「な、何言ってんのよバカ!」
俺、何か変な事言ったか?
「俺を無視すんな!」
不良が俺の耳元で怒鳴りだす。こいつの存在を忘れていた。
俺は今、非常にヤバい状況に置かれている事を再認識し、冷や汗が滝のように流れ出す。
「この野郎! 俺の女に口聞いてんじゃねぇ!」
「誰があんたみたいなゴリラの女になったのよ! 不良ストーカーのくせに!」
「お前はもう直ぐ俺の女になるんだ! 変わらねーだろ!?」
俺を間に挟み、いがみ合う二人。しかし、隙が出来た。俺が素早く場から離れて囮に……
「逃がさねーぞゴラァ!?」
いつの間に周り込んだんだ!? くそ、面倒くさい事になったぞこの野郎! 親父、本当に恨むぜ!?
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