PM10:30

4/6
前へ
/10ページ
次へ
  宙を舞ったダンボール箱は『カシャン』と小さな音をたてて落ちた。 棚の上の高さから落ちたわりには、そんなに中身が飛び出さずにすんだ。 「あ…えっと…ごめんなさい」 台から降りて彼女に謝る。 箱の中身を拾おうとして目についたものは…筆ブラシにハケに…絵の具?!   「あれ?絵…描くんですか?」   そう口にした瞬間、箱の中に見えたもの。それは彼女が男の人と仲良さげに笑顔で写っている写真だった。 オレは…思わず、じっと見てしまった。 それに気付いた彼女は小さな溜め息を一つついた。   「あ~ぁ。見~た~わ~ね~(笑)」 そう言うとペロッと舌を出して“イヒヒ”と意地悪っぽく…わざとらしく笑って見せた。 「と言うより、何処にしまってたのか忘れてたのよ。」 補足…というように彼女は付け足した。 間髪を入れずに言葉を続ける。 「処分するつもりだったし…。もうご飯出来るから。それは横に寄せておいて。」   処分…。   何となく彼女の言葉を気にしつつ、クッキングペーパーを渡すと、言われた通りに軽く片付けて棚の横に寄せて置いた。  
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加