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ある日、友達が勤めてるスーパーに母親と行った。
友達は残念ながらまだ出勤じゃなかったみたいで、
つまんねーってゴネながら歩いてたら、
「……あ」
……うわ、藤田さんだ。
目の前には『藤田』の名札をつけたおっさん。
けど藤田さんは僕のこと知らないから、
目の前の僕には目もくれず、そのまま横を通っていった。
僕は後ろを振り返る。
仕事をする藤田さんの大きな背中。
「……ムカつく」
その大きな背中に
気づかれないように悪態をつく。
友達の好きな人。
僕が遊びたい時に限って、先に友達をとってしまう藤田さん。
僕が励ましてもらうよりも先に、友達に励ましてもらえる藤田さん。
僕よりも先に友達を励ます藤田さん。
僕には引き出すことのできない友達の笑顔を引き出す藤田さん。
……悔しいけど、あんな幸せそうな友達を見れたのは
藤田さんのおかげだ。
僕は、藤田さんのこと……。
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