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それから2人は言葉を交わさなくなったが、楓華も男もそれが一番いいと思っているようだった。
しばらく歩いていると、”理事長室”と書かれた札が見えてきた。
「あっ!」と楓華は声をあげた。
「よかった、ついた…。理事長室にはたどり着けないかと思った……」
ほっとして、楓華は男に向き直った。
「本当にありがとうございました!ご迷惑かけました」と頭をさげた。
男は「いいですよ、そんなこと。俺もついでだったんですから。早く校内地図、覚えられるように頑張ってくださいね」と言って、来た道を戻って行った。
も、戻って行った!やっぱり迷惑かけちゃったなぁ…。今度会ったらちゃんとお礼を言わなきゃ!
と楓華は思った。
「…あ!名前聞くの忘れた!!……でも、あれだけ存在感あったらそのうちわかるよね……うん」
気楽に問題解決をした楓華は、理事長室のドアの前に立ち、身なりを正した。
緊張するなぁ…。
「よし」楓華はそう言って自分にエールを送る。
そしてドアをノックした。
コンコン、と高級感溢れる綺麗な音がしたあとに、楓華は「失礼します」とドアノブに手をかけ、ゆっくりとドアを押した。
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