災難と同居人

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ドアを開けた部屋の正面にどーんと豪華な机があって、その机には”理事長”と書かれた札が置いてあった。 その机の向こう側に人が座っているのが見えた。 理事長はかわいらしいおじいさんだった。  あ…この人が理事長なんだぁ。 「初めまして、高瀬楓華と申します。これからよろしくお願いします」 と楓華は頭を下げた。 「おぉ、これはこれは。すまないねぇ、こちらのミスで」 理事長は、ほっほっほ、とあごにたくわえた黒混じりの髭を触りながら言った。 「いえ、取り消しにならなかっただけよかったです」 苦笑いを浮かべずにはいられなかった楓華は、はははっと付け加えた。 「一週間。これといってまともな授業はまだ始まっておらんよ。身体測定、授業オリエンテーション、校内見学…等々。明日、明後日あたりからじゃな、授業開始は」 と理事長は言って、楓華から目線を外した。そして、楓華の後ろ、ドアの方を見つめていた。まるで楓華には見えない何かが背後にいるかのような、そんな目つきで。  
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