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「初めてか?こういう家は」
「はい…」
「だろうな。お前と同い年で入ったことあるやつなんてほとんどいないだろ」
男は恐らく拾ったのであろうビールを飲んで言った。
俺は本題を持ちかける。
「それで…どうして僕の癖を見抜けたのですか」
「足跡」
「足跡…?」
なんのことだ。
「お前が投球練習したあとの足跡を見れば一発だ。踏み込む位置がバラバラだ。ここでまずコントロールが悪いことが分かる。」
気が付かなかった。
「じゃあ球種が分かったのは…」
「球速と肘の位置だ。お前は変化球のとき、肘が下がる。ほぼ100%だ。肘が下がり、球速も遅ければカーブ。球速が早ければスライダー」
すごい。観察眼は凡人レベルじゃない。
俺を見てたことはいまいち気にくわないが…
「どうだ?納得か?」
「はい。あの、昔、野球やってたんですか?」
俺が聞くと男は一瞬表情が暗くなり、ちょっと待ってろ、といって近くにあったガラクタの山から一枚の服を出した。
「見ろ。昔の俺の服だ」
男が出した服…それは野球のユニフォームだった。
縦じまにチーム名。
プロ野球のチームだった。
「プロ野球の選手だったんですか…?」
「ずいぶん昔だ」
男はビールを啜る。
「でもどうして…」
「ケガだ。プロ6年目でな。右投げで、ピッチャーやってた。そしたら右肩をやっちまった。そのあと野手転向して二年目でクビだ」
いい終わって、男は持っていたビールの缶をガラクタの山に放り投げた。
「現役引退しても、コーチとか…」
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