第1章 【誘拐】

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私立小笠原学園、学園長。 小笠原 大蔵(おがさわら たいぞう)。 祖父と親子2代で、日本を代表するエリート校を創り上げた父。 小学校受験に始まり、大学までがエスカレーター式。 学力レベルも高く、この不況による就職難にも関わらず、卒業後の就職率は90%。 入学志願者も年々増加している。 世間はそんな父を成功者と持てはやす。 私にとっては最低最悪な父親。 父との思い出なんて何1つ無い。 遊んでもらった記憶も、一緒に食事した記憶も…。 病弱だったお母さんの死に際にすら、父は現れなかった。 「美華? どうしたの?」 「あっ…朱里(あかり)。 ううん…なんでもないよ」 私は廊下を教室に向かって歩く。 朱里は小学校からの幼馴染みで有名IT企業の社長令嬢。 この学院には、朱里のように社長の御曹子や令嬢も少なくない。 そういう意味でも“エリート校”なのだ。 「またあの絵見てたの?」 「……」 “あの絵”とは綺麗な女性が愛し子を抱いている絵。 その絵に亡きお母さんを重ねてしまう…。
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