第1章 【誘拐】

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彼は上着をカメラから取り、私のブラが見えないように前から掛けてくれる。 「あ…ありがとう…本当に…ありが…」 初体験をあんな男に奪われるかと思った…。 私の目から涙が零れる。 「すまない…辛い思いをさせて…」 「っひっくっ…ぅっ…ひっく…」 「よく我慢したな…偉かった」 そう言ってまた私を抱き締めて、頭を撫でてくれる。 何故この人は私を抱き締めてくれるの? これも作戦? あれ…? “偉かった”って…言ったよね? 昨日も“偉い”と頭を撫でてくれた…。 この優しい手を…私は知っている? こうして“偉いぞ”って褒めてくれる人を知っている…。 「……りゅっ…龍ちゃん……?」 私の頭を撫でていた男の手が止まる。 「龍ちゃんなの? 龍騎(りゅうき)お兄ちゃん!?」 男は大きなため息をつく。
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