第1章 【誘拐】

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それなら恋愛なんて知らない方が良い。 いつか別れなければいけない人と恋愛しても辛くなるだけだから…。 その何処の誰ともわからない見合い相手のために、大事な初体験を取っておくのはしゃくだけど、残念ながら初体験を捧げたいと思う相手もいなかった。 毎日のように、こうしてラブレターをもらう。 でも、どの人も私じゃなくて小笠原の名前に引かれて寄って来ている気がして、どうしても付き合う気にはなれない。 最初は呼び出されれば行って断っていたけど、それも毎日続けばウンザリもする。 今では呼び出し場所にも行かなくなった。 授業が始まり、私はそっとポケットに閉まった封筒を取り出す。 そして中から1枚の便箋。 何これ!!!! まるで脅迫状のように、新聞の文字を切り合わせて作られた文章。 『写真を返して欲しかったら放課後裏門の前で待て』 なっ…何よ…これ。 写真って何!? 全く身に覚えがない。 この学園には大きな正門と、そして正門より少し小さい裏門がある。 正門の方が送り迎えの車が入りやすいし、バス停も最寄り駅も正門側。 裏門を使う生徒はほとんど居ない。 これって…脅迫状…?
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