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火芽香が意を決して開けた襖が、半分ほど開いたところで。
「火芽香。ようやく来たね」
まるで待ちぶせていたかのように声をかけられた。祖母の声だ。
火芽香はそろそろと顔を出し、部屋の中に祖母の姿を発見すると目をぱちくりさせた。
「おばあちゃん?」
思わず呼び返してしまったが、継承式だったのだ。先代である祖母がいない筈はない。
「あとはお前が来るだけだったんだよ。そこに座りなさい」
祖母は少し険のある言い方で火芽香に着席を促した。
日頃から祖母に対して従順な火芽香は、色々説明が欲しいと思う気持ちに蓋をして、とりあえず唯一残っている座布団の上に正座する。
するとその右隣に座っていた、髪の長い女の子がにこりと微笑んで会釈してくれた。年は同じくらいだろうか。
軽く部屋の中を見渡すと、火芽香の右隣に女の子が2人、左隣にもあと2人座っている。
部屋の中央、広いスペースに袴を来た男性が1人立っていて、更にその向こう、火芽香の向かい側には剣道着を着た男性が4人、並んで正座している。
そしてその男性達の後ろの壁際に火芽香の祖母と、もう4人の女性が座っていた。
総勢15人。
親戚だと言われていたが、火芽香には祖母以外どの人にも憶えがなかった。
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