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「では、継承式を始めます。進行は私、銅剣一郎が務めさせていただきます」
中央に立っていた、袴の男性が口を開いた。
予想より知らない人だらけで戸惑っている火芽香をよそに、式は始まってしまったようだ。
「まずは──音黄野璃光子」
「はぁい」
剣一郎なる男性が名前を呼ぶと、場に似付かわしくない派手目な女の子が気だるそうに立ち上がった。
明るめの茶髪で、ふんわりウェーブがかかっている。目がパッチリしていて可愛らしい顔だが、化粧が濃い。スタイルも何となく華があるので、アイドルにいそうな感じだ。
璃光子が剣一郎の前に立つと、式典らしいムードがぐっと増し、部屋中に緊張感が漂う。
剣一郎は数秒沈黙して空気を張り詰めさせた後、凛とした声で進行した。
「璃光子。君は今日から16歳。音黄野家の当主となり、一門を率いる資格がある。心して務めなさい」
その、予想だにしなかった言葉に火芽香は驚いて瞠目した。
『今日から16歳』
同じ年齢で、しかも同じ誕生日──その子が今日同じように継承式を受けている。
偶然とは思えない奇妙すぎる一致だ。
火芽香は思わず祖母の方を見たが、祖母はどこか遠い目で式の成り行きを見つめている。
何か、思い出に浸っているような顔だ。
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