“継承式”

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 しかし、驚いたのは火芽香だけではなかった。 「今日から16歳って──私もなんだけど!?」  大きな声で叫んだのは、ショートヘアーでボーイッシュな女の子だった。  すごく小柄で細く、とても16歳には見えない。むしろ小学生に見える。  剣一郎はその少女を見ると、呆れた声で(たしな)めた。 「天蒼水青(てんそうみさお)。継承式の最中だぞ。私語は慎みなさい」 「だって!」  水青(みさお)は威勢よく食らい付いて立ち上がったが、彼女の祖母と思わしき女性に黙りなさいと(いさ)められると、すごすごと腰を下ろして小さくなってしまった。  その意気消沈な顔は、耳の垂れ下がった小型犬のようで可愛らしい。  剣一郎はこほんと一つ咳払いをすると、仕切り直して進行した。 「続けます。次は、緑御森風歌(みおもりふうか)」 「はい」  火芽香の隣に座っていた長い髪の女の子が立ち上がった。その拍子に、黒い真っ直ぐな髪がサラサラ揺れ、立ち方にも優雅さを感じた。育ちの良さそうなお嬢様といった雰囲気だ。 「風歌(ふうか)。君も、今日から緑御森家(みおもりけ)の当主として精一杯務めなさい」 「はい」  風歌からは、微塵も迷いや不安は感じられない。おとなしそうな顔をしているが、肝が据わっているのだろうか。凛として、当主の証である指輪を受け取っていた。  継承式では、指輪が渡されるようだった。火芽香にはなんの宝石かはわからなかったが、それぞれ色のついた石がはめ込んである。  先程の璃光子(りみこ)は、黄色い石の指輪を受け取っていた。風歌(ふうか)は緑色の石だ。
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