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結局何も言えないまま、すごすごと席に戻り、当主の証である赤い石の指輪をじっと見つめた。
そして、何も聞けない代わりにぐるぐると考える。
──この継承式はどこかおかしい。親戚で合同でやるにしても、全員初対面なんて不自然だ。それに、あの女の子たちみんなが同じ誕生日だなんて、偶然にしても出来すぎている……。
火芽香がいよいよ恐怖を感じ始めた時、
「あなたも、何も聞かされてないの?」
隣に座っていた髪の長い女の子──風歌が小声で話し掛けてきた。
火芽香はハッと顔を上げて、同じく小声で答える。
「は、はい。あなたも?」
「うん。継承式があるとは聞いてたけど、こんなに大勢でやるとは聞いてなかったわ。それに、あなたも今日が誕生日なんでしょう? あの子も、あの子もでしょ? 不思議よね~」
そう言いながら璃光子と水青を見る風歌の目には、確かに疑惑の色が浮かんでいる。
意外だった。微塵の迷いも見せなかった彼女も、何も聞いていなかったなんて。
「ふうか……さんは怖くないの?」
火芽香からすれば、思い切った質問だ。
しかし風歌は人差し指を唇に当てて、まるで先生に怒られてもケロッとしてしまう子供のような口調で答えた。
「ん~変だなとは思うけど、これが終わればまたいつも通りでいいんでしょ? だったら、大騒ぎしない方がいいかなって」
いかにもお嬢様らしい従順な判断だと、火芽香は内心苦笑いしていた。
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