“継承式”

9/12
782人が本棚に入れています
本棚に追加
/1503ページ
「最後は、気紫闇奈(おきむらあんな)」 「……ハイ」  火芽香と風歌が話してる間に継承式は進み、小柄な女の子──水青(みさお)の番はいつの間にか終わっていた。  最後に呼ばれて立ち上がったのは黒髪セミロングの少女で、その姿を見た火芽香は思わず息を呑んだ。  モデルのようにすらっと伸びた手足。目は大きいながらもきりっとしていて、全体的にも整った顔をしたまさに美人。  つんとして媚びない表情はクールビューティそのもので、堂々たる貫禄のようなものも感じる。  一言で言ってしまえば「綺麗」だった。  全員が見とれている中、闇奈(あんな)と呼ばれた少女は剣一郎の前に立つ。 「闇奈。お前はすごく強くなった。私でももう敵わないくらいだ。その強さがあれば、気紫家(おきむらけ)を繁栄させることができるだろう。しかし、力の過信は禁物だぞ」 「ああ。わかってる」  美人が男みたいな喋り方をしたので火芽香は驚いた。同時に、剣一郎と闇奈(あんな)は知り合いのようだと感じた。 「当主としての証の指輪だ。つけなさい」 「指輪なんて気持ち悪くてつけらんねぇよ」  その美貌からは想像出来ないぶっきらぼうな言葉遣いで、闇奈は指輪を拒否している。剣一郎は溜息をついた。 「闇奈......お前は元はいいんだから、もう少し女らしくしなさい」 「余計なお世話だ」  闇奈(あんな)は黒い石のついた指輪を剣一郎の手からパッと引ったくると、指にははめずにそのまま持って席に戻ってしまった。  自分には一切できなかった反抗をやってのけた闇奈の姿を、火芽香は釘付けで見てしまった。 「なにあの子。今までに出会ったことないタイプだわ」  風歌の呟きに、火芽香も心の中で共感した。
/1503ページ

最初のコメントを投稿しよう!