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「最後は、気紫闇奈」
「……ハイ」
火芽香と風歌が話してる間に継承式は進み、小柄な女の子──水青の番はいつの間にか終わっていた。
最後に呼ばれて立ち上がったのは黒髪セミロングの少女で、その姿を見た火芽香は思わず息を呑んだ。
モデルのようにすらっと伸びた手足。目は大きいながらもきりっとしていて、全体的にも整った顔をしたまさに美人。
つんとして媚びない表情はクールビューティそのもので、堂々たる貫禄のようなものも感じる。
一言で言ってしまえば「綺麗」だった。
全員が見とれている中、闇奈と呼ばれた少女は剣一郎の前に立つ。
「闇奈。お前はすごく強くなった。私でももう敵わないくらいだ。その強さがあれば、気紫家を繁栄させることができるだろう。しかし、力の過信は禁物だぞ」
「ああ。わかってる」
美人が男みたいな喋り方をしたので火芽香は驚いた。同時に、剣一郎と闇奈は知り合いのようだと感じた。
「当主としての証の指輪だ。つけなさい」
「指輪なんて気持ち悪くてつけらんねぇよ」
その美貌からは想像出来ないぶっきらぼうな言葉遣いで、闇奈は指輪を拒否している。剣一郎は溜息をついた。
「闇奈......お前は元はいいんだから、もう少し女らしくしなさい」
「余計なお世話だ」
闇奈は黒い石のついた指輪を剣一郎の手からパッと引ったくると、指にははめずにそのまま持って席に戻ってしまった。
自分には一切できなかった反抗をやってのけた闇奈の姿を、火芽香は釘付けで見てしまった。
「なにあの子。今までに出会ったことないタイプだわ」
風歌の呟きに、火芽香も心の中で共感した。
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