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闇奈が座ったのを確認した剣一郎は、一つ息を吐くと継承式を終えた5人の娘たちを見渡し、神妙な面持ちで口を開いた。
「さて、継承式は終わった。君たちは晴れて各家の当主となったわけだが、さっそく当主として行かなければならないところがある」
──叔父が言っていたところだ。
火芽香はドキッとした。息を飲み、次の言葉を待つ。
剣一郎は娘達の顔を見ながら、何の躊躇いもなく不可思議な言葉を放った。
「君達には、地球から出てある惑星に行き、修業をしてきてもらう」
・・・・・・・・・・・・。
5人の娘たちはキョトンとしている。誰一人として状況を理解している者はいなかっただろう。
というか、どう反応したらいいのか分からないのだ。
冗談なら笑ってやってもいいが、剣一郎の顔は冗談を言っている顔ではない。
「もちろん、君達だけではない。護衛がつくから安心しなさい」
そう言いながら剣一郎が指し示したのは、正面に座っていた剣道着を着た4人の男性だった。
娘たちの戸惑いなど構わずに、剣一郎はその男性たちの紹介を始める。
「右から、銅剣助。私の倅だ」
紹介された剣助は正座したまま軽く一礼した。
「隣は、金大牙。その隣は、鉄槍太」
剣一郎が指を差すのにしたがって、次々と同じように一礼していく。しかし何故か、みな無表情の俯きがちで娘達を見ようとはしない。
「そして、銀刀矢。彼は護衛役を務めるのは2回目で唯一の経験者だ。何かと頼りになるだろう」
剣一郎は最後の一人を紹介し終えると、娘達に目を向ける。
5人の娘達は、この信じがたい話を終始ポカンとして聞いていて誰も意義を唱えるものはいない。その心中は共通して、
(この人なに言ってんの?)
といったところだろう。
「では、もうこんな時間だ。少し急いだ方がいいな。剣助!」
剣一郎が鋭く息子の名を呼ぶ。
呼ばれた剣助は無言で立ち上がり、背中に装備されていた剣を手際良くスラリと抜くと、床に向かって突き立てるように構えた。
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