2.

6/8
268人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
でもなんだって胸が痛むの? 意味がわからない。 「あら?ユリ、指輪は?」 「あたし、指輪とかアクセサリー嫌いだから」 「んもう。せっかく工藤さんがくれたのに?」 「だって……邪魔なんだもん」 「ねぇあんた、智弘以外とはもう今は会ってないんでしょ?」 「うん。智弘以外は、結婚するって言ったら引いたのが二人、怒り狂ったのが一人」 「その怒り狂ってユリを殴りつけたやつは、工藤さんがやっつけちゃったのよねぇ。いい男だわぁ。強くて優しくて金も稼いで愛してくれるなんて最高の男じゃない?」 「そうだね。毎日どんなに遅くなってもセックスするし」 「絶倫?」 「そうね」 「きゃあ御馳走様。まったくユリの罰あたりめ」 「彼はそれでいいっていうから」 ママはふと悲しそうな顔をした。 火をつけていない煙草で唇をとんとんと叩いている。 「ねぇユリ?」と言いかけて唇を舐めた。 ずるずるとパスタを啜りながら私は「んん?」と聞き返したけど、ママはふっと微苦笑を浮かべて首を振っただけだった。 「……何よ?」 「ううん。いいわ。それはいいの」 変なママ。でも、いいならいいや。 どうしても聞かなきゃならないこと、なんてどうせこの世にはない。 知ってたって知らなくたって、 起きることは起きるし、避けられないことは避けられない。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!