1019人が本棚に入れています
本棚に追加
「あぁっ、…サイアク…」
自転車を前にしゃがみこむ。
「嘘でしょ…」
タイヤがパンクしてる。
今から電車じゃ、学校遅刻しちゃう…
私、山本沙希(ヤマモトサキ)
一週間前、高校生になったばかり。
ナオくん、もう行っちゃったかな…?
ナオくん
加藤直明(カトウナオアキ)
同じ団地の同じ階段。
私の家の上がナオくんの家。
一つ年上の幼なじみ。
階段を下りてくる足音。
姿を現したのはナオくん。
「おはよ、…何やってんの?」
「おはよナオくん、後ろ乗せてって?」
自転車のパンクに気がついたのに、
「…二人乗り、見つかったら没収されんじゃん」
ナオくんは自転車の準備をして私を置いていくそぶり。
「えっ、入学早々遅刻なんてやだっ。
学校の近くで降りるからっ」
慌てる私の様子を見て自転車に跨がると、私の方を振り返った。
「ほら、遅刻すんぞ?」
そう言って、私が後ろに乗るのを待ってくれる。
なんだかんだ言っても、結局ナオくんは優しい。
「ありがとっ」
急いで後ろに乗ると、ナオくんは自転車を走らせた。
.
最初のコメントを投稿しよう!