第一章

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4.    この世界いや、異世界と評すべきか。  前々からおかしいとは思っていたんだ。動植物は皆一様にデカイし、前世では見たこともない変わった風貌の猪や鹿はいるはで、疑問には思っていたんだ。  だが、確信したね。アレはおかしい。リアルじゃない。  あんなモノは存在しちゃいけない。自然の法則に反してる。    「グルゥゥゥ(死体が動いてやがる)」  木の後ろに隠れ覗き見る。目の前およそ10m先には人間“だった”モノがいる。  はじめは初の人間との遭遇に喜び勇んで近づいた。着込んでいるのはどこのコスプレだよと思うような皮の鎧に皮の手甲、皮の脚甲。それと皮の兜。  怪しさMAXだが、人間とのファーストコンタクト。あわよくば食べ物を分けてもらおうと思ったのだが。  袖や関節の隙間から見える白くて細いモノ。動くたびにカラカラ乾いた音が聞こえる。  極めつけはヘルムの影で見にくいが、陥没した二つの眼。白い歯をカチカチいわせながら、猫背の姿勢でノロノロと歩いている。    鎧を着込んだ腹の部分には大きな穴が開いており、おそらく猪の牙か鹿の角に突かれたのが死因だろう。  それにしてもどうやって動いているんだ?  筋肉も筋も無いのに骨だけで動くなんて。ファンタジックすぎるだろ。  魔法かマナか、チャクラなんてものが存在するのだろうか。  何にしても関わってはいけない類のものだ。  可及的速やかにこの場を離れるべき。  そうと決まればと、そそくさと逃げようとしたところあの骨野郎こっちを見てないだろうか。  光さえ吸い込んでしまいそうな暗い眼窩。その元は眼球を納めていた部分でこちらを見てくるではないか。  ゆっくりとした重さを感じさせない軽い足取りで確実にこちらへやって来る。  「クゥッ(やばいっ)」  そう思い身を翻し走り出すが、むこうも同様に走り出していた。  カタカタカタカタと乾いた音が近づいてくる。カチカチカチカチと歯と歯を合わせた音が響いてくる。  笑ってやがる。こちとら子供と言えど狼じゃい。マッハで引き離してやるよ。
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