第一章

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 すると上半身は動かなくなり、頭部だけがカチカチ歯を鳴らすだけになった。  それでも十分気持ち悪いが。  しかしどうするかなこの頭。脅威では無くなったがカチカチカチカチを煩い。  粉々出来ればいいのだが、踏みつけてもこの子狼ボディではびくともしないだろうし、石を上から落とすにしても肉球付き前足では重たい石を持ち上げられない。  噛み砕くか。いやいや無理だ生肉より硬い物を噛んだことのないこの顎では関節を痛めるのがオチだろう。  やはりアレしかないか。  自分の中で一番の破壊力を誇るあの技。  今日は、すてみタックルのバーゲンセールだな。    そうと決まれば頭部を守る皮の兜を外さないといけない。  引っ張り出すには勇気がいるし噛まれたらヤダな。  ちょうどいい枝が落ちてるからこれで。  枝を咥えて頭蓋骨の前へ。    ガブッ  やっぱり噛みついてきたよ。  そのまま兜から掬い上げて近くの木の前に枝ごと置く。  その木に向かって三度のすてみタックルの発動。  頭蓋骨は挟まれて粉々に砕け散った。    今度こそ一息つけると腰をつきお座りの姿勢でいると。骨野郎の残骸から紫色の靄のようなモノが湧き出てきて、吸い込まれるように自分の中に入って来た。  一瞬呪いかナニカかと思ったが、身体の中で活力というか生命力というか、熱いモノが増えるのを感じ悪いものではないと直感した。  おそらくこれがあの骨を動かしていた原動力。  そしてこの力がもっとあれば…  「(ふふふふふ)」    自分は強くなれる。
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