第一章

12/18
前へ
/29ページ
次へ
 「(え?)」  突然頭上から枝が落ちてきた。  寸前のところをサイドステップで回避し見上げると。  巨大な古木がまるで腕を振り下ろしたかのように枝を叩きつけてきていた。    「Πγυδαι」  意味不明な音が響いてくる。まるでホースを通して聞こえてくるようなくぐもった音。  よく見ると幹の中ほどに人間の顔のようなモノがあり、そこから音を発している。  慌てて枝から届かない距離に逃げておく。  骨野郎に続きまたしてもファンタジックなモノが。  古木はその場から移動できないのか、振り下ろした枝を戻すと動かなくなった。顔のようなものは相変わらずあり、目を瞑っている。  どうやら近づかない限り害はない様子。  木が動くなんて初めて見たが、それよりもさっき聞こえた音はまるで意味のある言葉のようではなかったか。  もしコミュニケーションがとれるなら話してみたい。  「わぅー(すいませーん)」  おずおずと話しかけてみるが古木は何の反応も見せない。  古木は周りの木と区別がつかないほど微動だにしない。  「わふーぅ?(少しよろしいですか?)」  「υ」    反応アリ。  片目を薄く開け、こちらを見下ろしてくる。  「わうわうわぁあ?(言葉通じますか?)」  今気づいた。自分狼だからしゃべれないじゃないか。  わうわうしか言えないし。失念してた。  (ナニカ?)  自分の間抜けさに落ち込んでいると、頭の中に声が響いた。    「わっわふ!(あぁあの!)」  (ネンジヨ)  言葉を思い浮かべろということか。  (こうですか?)  (フム)  会話が出来た。やばいめちゃくちゃうれしい。  ここで生まれて初めての会話だよ。  なにしゃべっていいのかわかんないよ。  なに聞こ、咄嗟に出ない。  (あなたは木ですか?)  (イヤΕσυωοχο´μο)  へ?  
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加