第一章

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 ガブッ  あれ?  急に襟を掴まれたような衝撃と手足に感じる宙ぶらりん感。  光に目が慣れてくる。バンジージャンプをした後の様な脱力感を感じながら視界に入ってきたのは、黒い毛に覆われた動物の前足二本。    血の気が引いて行く。  巨大な狼は外にも居たんだ。  首筋を噛まれたまま元いた洞窟内へ連れて行かれる。  そして茶褐色の狼の前に降ろされる。  えぇい、喰らうなら喰らうがいいさ。  こちとら一度死んだ身(たぶん)、腹は据わっている。ひと思いにガブリといってくれ。でも、痛くしないでね。    瞳をジッと閉じ、くるであろう痛みを待っているといっこうに襲われる気配がしない。  片目を薄く開け様子を窺うと、件の狼は目を閉じ寝ているではないか。  もう一匹の黒い方はというと、入口を見据えて座っている。二匹ともこちらに関心が無いようだ。  では、何故連れ戻された?  食べる為ではないのか?  さては、保存食にとって置くつもりか?  さっぱり解らない。  ただ、分かることはまだ私は生きているということ。生きているのならまた脱出の機会が得られるはず。それまでは大人しく二匹を刺激しないようにしよう。  きゅ~  きゅううう  ぎゅう?  きゃん    そういくぶんか冷静さを取り戻した時、洞窟内では複数の声が聞こえてくるのが分かった。  複数の声たちは茶褐色の狼の腹の方から聞こえ、もぞもぞと動いているのが分かる。  どうやら子狼たちが母乳を飲んでいる最中のようだ。  微笑ましい。出来れば一匹お持ち帰りしたいところだが、そんなことしたらこの二匹が黙っちゃいないだろう。  大人しく見つめるだけにしていると、背中をグイグイと押されて子狼たちの群へ連れて行かれる。  振り返ると黒い狼が大きな鼻で私を押し込んでくるではないか。  そして、モフモフの海へ。  近くで見るとこの子狼たち私と同じぐらいの背丈をしている。大きい。でもかわいい。  試しに撫でてみようと手を伸ばして……  ん?  自分の手を見返す。  え?  黒い毛が覆われている。    なんじゃこりゃ~~~~~~~!!?  肉球がついていた。  
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