60人が本棚に入れています
本棚に追加
獲物を逃がした自分の周りに兄弟たちが集まってくる。その目はどこか冷ややかだ。
済まないまたなんだ。尻尾がしゅんと垂れ下がり自分の心情をそのまま表現しているようだ。
だって怖いんだもん。仕方がないじゃないか。と自己弁解を述べてみるも口から出るのは。
「きゅうぅぅぅ...」
なんとも情けない。
ここで一つ自分は兄弟たちとは決定的に違うところがある(言い訳じゃないよ、ホントだよ)。前世が人間でその記憶があるとかそんなものではない。
体格が違うのだ。それも圧倒的に。
同じ物を食べ、同じようにじゃれ付いて成長してきたのに、兄弟たちはすくすくと成長し父親たちの半分ぐらいまでになっているのに対し、自分はその兄弟たちの半分ぐらいの背丈しかない。
まさに子犬サイズ。これ以上成長しないし大きくなれない。それはこの森で生きていくにかなりのハンディキャップとなっている。
さっきみたいに自分の所為で獲物を逃したことが何度もあるし、そもそも体格が違うから移動速度も自分に合わせ遅くなってしまう。
必死に走っても兄弟たちの早歩きと同じペースってこれ如何に。
そんなこんなで自分はこの群で確実にお荷物とかしている。
前後左右から兄弟たちの冷たい視線に晒されていると、父狼と母狼が戻ってきた。
父狼はその威厳ある顔で自分を見つめてくる。その目には、なんの感情も帯びていない。ただ透き通った黒曜石のような瞳で見てくるだけだ。
母狼からは兄弟たちと似たような冷めた視線を感じる。
はぅ~、 ホント申し訳ないです。
父狼が歩き出す。
母狼も兄弟たちも動き出す。
自分はその後ろを少し離れてついて行く。
今夜は満月のようだ。満天に煌めく星々が薄暗い森の中を仄かに照れしだす。
狩りは続く。もう三日は何も口にしていない。水だけではそろそろ限界だ。
闇夜にまぎれて、休んでいる動物を確実に狩りに行くのだろう。
草木はかき分け、木々を分け入って森の奥深くへと進んでいく。
最初のコメントを投稿しよう!