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わざわざ外で待っている桐山を見て、ついつい思い出してしまった。
普通なら、あいつが俺を待っているなんて、絶対にないだろう……うん、間違いなく。
他の三人の影も校舎の中に見えるから、どうやら待ってくれてるみたいだが……。
「はぁ……」
どうにかして桐山を無視出来ないものだろうか?
まぁ出来ないだろうな……。
「悪い、ちょっと遅れた」
「うん。早く行くよ」
待っていた結愛に声をかけて、そのまま中に入ろうとする。
が、何でか桐山が俺の横に並んできた。
そして、他の奴に聞こえないくらいの小さな声で話しかけてきた。
「孝介さん、今日もお願いしますね」
「却下」
「もうお店には連絡してありますから」
「はぁ……」
ワザとらしく、ウフフフフとか笑いながら駆け出す桐山。
左右に揺れるポニーテールを見ながら、もう一度ため息をついた。
いつものことだけど、どうにかならないもんか?
放課後……面倒くさいな。
前で騒いでいる五人を見ながら、俺は開いたままの重い扉を閉めた。
軋みながら閉じていく扉は、鈍い大きな音を出して、完璧に太陽の光を遮断した。
「だから、恵は離れてくれって」
「うー……ゃあ」
「フフッ」
「のわっ!!ちょっと悠香さんまで!!」
慎也に抱きつく二人を見て、前を走っていた桐山は騒ぎながら走っていく。
俺は、なんかもう……呆れるしかなかった。
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