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毎年この地へやって来ていたが、あれ以来あまり顔を合わせないようにしてきた。
もう終わった関係。
鮎美も三十代半ばになっているはずだ。既に俺の中では消えた存在。
「部長、おはようございます。あちらに社長も専務もいらしてましたよ?」
「ああ、おはよう、そうかい‥‥じゃ、小椋君わたしはこれで‥」
「は、はい!部長、また明日からよろしくお願い致します。」
軽く頭を下げ鮎美を見ないようにしてその場から去ろうとした。
「ちょっと!待ちなさいよ!」
クソッ‥‥声かけんなよ!こんな場所で無視する訳にはいかないだろ!
俺は小さく舌打ちしながら、振り返った時には営業用の笑顔で、さも今気付いたような表情を浮かべた。
「や、やあ河内さん‥久しぶ‥‥り‥」
俺は一瞬戸惑った。
彼女は‥‥
鮎美は、女神のように美しかった。
正確には‥‥美しくなっていた。香苗ちゃんさえ霞んでしまうくらいに‥‥
腕を組み仁王立ちの姿でも、着ている服の上からわかるくらい匂いたつような女の色香をも兼ね備えていた。
いつの間にか俺の知らない鮎美になっていた。
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