Prologue

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 そんな、異常な、異常すぎる光景を見て、僕は何をしていたかと言うと、ただ足を竦めているだけだった。  もちろん、僕の頭は、いだきが危ない! いだきを助けないと! なんて感情でいっぱいいっぱいだった。  でも、現実はどうだろう。  僕がどれだけ足を動かそうとしても、足は竦むだけで、微動だにしない。まるで錠をかけられているかのように。  僕がどれだけ、いだきの名前を叫ぼうとしても、名前どころか、いの字すら、声に出ない。まるで、喉が潰されているかのように。  状況に体が、脳が順応出来ていない。これが現実。  僕がどれだけ、いかなる行動を取ろうとしても、実行出来ない。ただ、動揺が、焦りが、汗が、溢れだすように沸き出てくるばかり。  動け! 動けよ体!  今、今いだきを護らなくてどうする! いつ護るって言うんだ! だから、動け! 体!
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