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……動かない。
動くことさえ、叶わない。
いや、まだだ、まだ諦めないぞ!
僕は強く歯をくいしばった。全身に力を入れるように。拳を強く握り、表情を歪ませ。
動けよ! 僕の体! 何で動かないだ! 何で! 何で、何で……。
何で、動かないんだよ。
どんなに力を入れても、どんなに歯をくいしばっても、全く動くことが出来ない。
僕は、何なんだ。
そんな僕とは対照的に、東野は体を、脳を状況に順応させ、取るべき行動を取っていた。
「いだき!」
東野は叫ぶと、いだきに向かって走り、手を伸ばした。
届け、届け! 僕は心の底からそう願ったが、現実はあまりに残酷で、東野の手は後僅かのところで届かず、いだきは空間に呑み込まれ、空間と共に消え去った。
残ったのは、理解し難い消失感、そして無力に対する嘆き、ただそれだけ。
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