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「言っておくけど、それはお門違いもいいところよ。異象は決して、望まない相手に罹ったりはしない。表面ではそう思ってなくとも、心の底ではそう思っている。そんな心の深層に、根本に、異象は罹るの。その人の望みを叶える為に」 「望みを叶える為に?」 「そう、異象は悪質的なものではないわ。むしろ、その逆よ。人の望みを叶える、常軌を逸した現象。それが異象なの。だから、心を開いて。奥まで、もっと奥まで。そして、何故、異象と巡りあったのかを、その時、望んでいたことを通して、思い出すのよ」 「僕が、望んでいたこと」 「そう。貴方が望んでいたこと。それを、何故、異象と巡りあったのかを思い出せたら、後は簡単。ただ、異象と対面するだけよ」  僕が、あの時、望んでいたこと、か。  僕はあの時、いだきを失ったことを、救えなかったことを、心の底から恨んだ、憎んだ。  どうして僕はこんなにも弱いんだと。どうして僕は何も護れないんだと。  どうして僕こんなにも無力なんだと。  だから僕はあの時望んだんだ。弱いのは嫌だと。護れないのは嫌だと。無力なのは嫌だと。  もっと、もっと、もっと。  強くなりたいと!
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