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異象との対面は、余りにも当然のようで、余りにも自然的だった。
あの時、確かに僕の中にあった望み、強くなりたいという思い。
それが僕と異象の巡りあったきっかけだと分かった時、途端、自分の中にある、心の扉が開いた気がした。
何と言うか、例えるにも、例え難い感じなんだよね。気づくと、そこには意味もなく、真っ白で、淡い世界が広がっていて、それで持って、何だか不思議な、不可思議な温もりを感じさせられて。
こう、ふわっと、ぬくぬくっと、僕の中で何か、何かが起こって。気づくと、目の前に、両手で掴める程の、小さな黒い球体が浮かんでいて。
何だか、意も知れぬような、気持ちになった。でも、不快感だけは確かに無くて、僕にはその黒球が異象なのだと、誰に言われることもなく、分かって、感じて。
ただ優しく、その球体に触れた。
触れて感じた。黒球の持つ、色には似つかわぬ、温もりを。黒なんかじゃない、もっと淡く、もっと優しく、もっと心地よい、もっと、もっと、もっと、澄み切った、確かな、何かを。
そして僕は黒球に、異象に対して、胸の中から、心の髄から、熱く湧き上がる言葉を、ただ純粋に、無垢に、言った。
ありがとう、と。
ただそれだけの話さ。
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