3/17
前へ
/92ページ
次へ
 気づくと世界は元に戻っていて、目の前には儚さんが、左隣には東野が立っていた。  何だか、何かが抜けたような、そんな感じ。体が軽いとも、重いとも言えず、何と言うか、言葉じゃ表せないかな、これは。 「うん、上手く異象と対面出来たようね。黒渦が出現しているわ」  儚さんはそう言って右隣を指差した。僕は何気なく右側を向いたが、次の瞬間、動揺を隠せないことになる。  だってほら、身の丈より少し大きい程の黒い空間、黒渦が出現しているんだもの。  まあ、でも、僕がここまで動揺したのには、これ以外にわけがある。なぜ、僕がそこまで動揺したかというと、 「この黒い空間もとい、黒渦、いだきを呑み込んだ渦と一緒じゃないか」  あ、東野が先に言っちゃった。  その通り、僕達の目の前に出現した黒渦は確かに、いだきを呑み込んだ渦と、同じ手のものだったんだ。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加